「食文化伝承の現代的な意義」(スローフード岩手・茂木さんのレポート2007年より)

投稿日 2010年03月18日

3年前に、スローフード岩手の茂木さんがレポートしてくれた勉強会のレビューが妙に印象に残っています。

今年は、国連が定めた「生物多様性年」です。
http://www.cbd.int/2010/welcome/

失われていくのは、動植物種だけではありません。
伝統、文化も放っておけば伝承されなくなっていきます。

それが果たして何を意味するのか・・・・考えさせられます。

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スローフード岩手・茂木さんのレポート2007年より
 印象に残ったこと

 1.講師のお話から
「食文化伝承の現代的な意義」

 食文化伝承の意義は、単に昔の食を懐かしむことではない。風土と先人の知恵が一体化した地域固有の食文化の基底には、神々や先祖、家族に 対する人々の祈りや願い・感謝そして愛がある。

 食は、命を育むだけでなく、心と絆を育む。心と絆を育むための食のあり方は、
①家族で協力して食卓作り
②家族揃っての食事、
が欠かせない。

 現代は飽食の時代であり、流通や冷蔵技術の発達から、保存食の必要性は薄れている。
しかし、食糧・エネルギーの多くを外国に依存するなかでの飽食であり、紛争や温暖化・異常気象の影響等により、食料不足の時代が来る可能性もある。

 もし先祖代々受け継いできた食糧保存・調理(お腹を満たすと共に、限られた食材で美味しく食べるための知恵も)を私達の世代が放棄してしまえば、将来の世代を見殺してしまうことになりかねない。

 飽食の時代にあればこそ、食の大切さを認識し、伝統の技術を受け継いでいかなくてはならない。
 2.“シゲばあ”のお話から

 昔から節句には5つのお膳を用意した。

 ・神様 ・仏様 ・大黒柱 ・井戸 ・厠

 そして、神様用はその家の家長が、仏様用はおばあさんが、大黒柱用は長男が、井戸用はお嫁さんが食べた。厠用のお膳は桐の葉で、お皿は桑の葉、節句が終わると半紙で包み、川に流した。

 常に冷害・飢饉の恐れがある岩手では、いかに食べ物を確保するかが重要であり、保存できるものは何でも保存した。また、食べ物を粗末にすることなど考えられない時代であった。

 嫁は毎日家の雑巾がけをするが、床を磨くだけでなく、食べ物がこぼれていないが探すことも大事な仕事で、こぼれたひえ飯のひえ一粒でも粗末にしてはならなかった。

 何事においても「もったいない」の気持ちがあり、81歳になる今でも、その気持ちを失ってはいない。
 3.参加者の意見をまとめると…

昔とは家族のあり方が変化し、家庭の中で食文化を伝えることが難しくなっている。
しかし、コミュニティの中で受け継いでいくことは可能。

岩手の山村には高齢者が多く、様々な知識や技術・知恵が蓄えられている。
それらを引き出し、交流を通じて伝えていくことがスローフード岩手にできる役割ではないか。