食育 at 湘南ベルマーレのサッカー教室  スローフード秦野からのたより

投稿日 2013年04月17日

スローフード秦野は、3月31日秦野市中央運動公園で、サッカーJ1リーグチーム / 湘南ベルマーレが開催したサッカー教室「サッカー・ファミリー・フェスタ」のプログラムのひとつとして「食育ラリー」を行いました。この「食育ラリー」は、サッカーを練習する5~7歳児とその親たちに、食べ物について正しい知識を伝えることを目的としています。スポーツとスローフードを結びつけようという試みは、日本ではもちろん初めて、世界でも聞いたことがありません。

この日、会場の秦野市中央運動公園の横を流れる水無川の土手は桜が満開でしたが、天候は一ヶ月後戻りした2月のような寒さ。その寒さにも関わらず、「サッカー・ファミリー・フェスタ」には150名を超える親子が集まりました。3回に分けられて開かれた「食育ラリー」には、そのうち約4分の一の合計40人あまりが参加。複数の子供を連れた親が目立ちました。
「食育ラリー」は、まず管理栄養士・料理研究家の小島麻衣子さんの「皆さ~ん、朝ご飯は食べてきましたかァ?」という質問から始まります。つづいて、市内のお茶生産者・山口勇さんが秦野名産の落花生のぬいぐるみ一緒に秦野の農業について説明し、いよいよ本番です。小島さんが「食育カルタ」と食品サンプルなどで語る食べ物の正しい知識に、子供たちは活発に反応します。「食育カルタ」は、3年前のスローフードジャパン奈良総会の時に奈良教育大学の学生たちが発表した食育のためのメソッドです。とくに、食品表示の内容と意味の説明には、子供だけではなく親たちも熱心に耳を傾けていました。

このプログラムを企画した湘南ベルマーレの横山由梨さん(スローフード秦野メンバー)は、「子供たちの身体的なパフォーマンスは、だいたい8歳位までで基礎ができます。この時期に、食習慣を通してそのパファーマンスを上げ、サッカーを楽しんでもらいたいと思いました」スローフード秦野では、湘南ベルマーレと一緒に、今後もこの「食育ラリー」を継続する計画です。神奈川県は、かつて中田英寿も在籍したJ1リーグの湘南ベルマーレ、横浜FマリノスのほかにJ2の横浜FCなどプロチームが三つ、U-18のリーグもあるサッカーが盛んな土地柄です。スローフードを日本に根付かせるためには、スローフード秦野のこの試みのようにそれぞれの支部(コンビビウム)の地元や地域に即した独自の活動が必要です。

3月16日、秋田県・角館で                                        スローフードジャパン総会開催

投稿日 2013年04月17日

3月16日、秋田県・仙北市でスローフードジャパン第12回全国大会が開かれました。この大会は、スローフードジャパンが2008年にNPO法人化してから第6回目の会員総会です。

大会が開かれた3月は、秋田県内各地で雛祭りに関わるイベントが行われます。会場となった仙北市の第三セクター角館温泉「花葉館」のロビーにも、そこからバスで約30分離れた親睦会会場の温泉「ゆぽぽ」のロビーにも、雛人形が飾られていました。まだ雪深い山間で、春を待つ心が伝わってくるような会場でした。
総会に先立ち、スローフードジャパン発足後8年ぶり第2回目となる、2005年以来開催されなかった「Ark(味の箱舟)担当者会議」が行われました。参加したのは13支部(コンビビウム)、20名あまり。スローフードインターナショナルが提唱するArk(味の箱舟)・Presidio(味の砦)プロジェクトは、このままでは消滅してしまうかもしれない伝統的な食材・食品をリストアップし、保護する活動です。今大会開催時点で会員実数(会費納入者)が1,000人を下回ったスローフードジャパンにとり、活動再生のキーのひとつとなるのが、このArk(味の箱舟)・Presidio(味の砦)プロジェクトです。フリートークに近い会議では、会議出席者同士のコミュニケーションを図る、全国のArk(味の箱舟)登録食材・食品がわかるようなパンフレットを作って欲しいなど、活発な論議が交わされました。

総会では、大きな決定が二つありました。
ひとつは、スローフードジャパンが抱える約880万円の負債について。この負債は、債権者の代表である若生裕俊さん(スローフードジャパン前会長)との間で、現会長や事務局長など「執行部」の個人名を記さない確認書を交わし、企業が名刺にスローフードの専用ロゴマークを使える「アミーチ・ディ・スロー」プロジェクト(http://www.slowfoodjapan.net/blog/2011/01/01/1983/)などの収益金で返済することが承認されました。
ふたつめは、日本の農業を巡る最大の問題であるT.P.P.加盟についてです。これについて、「スローフードジャパンはT.P.P.に関してとくに方針を定めない。賛成か反対か、各コンビビウム(支部)が独自に取り組めば良いことだ」との見解が、地元スローフード秋田の会長でスローフードジャパン副会長、東京在住の石田雅芳さんから示されました。この見解は、「ほかの農業団体などからT.P.P.反対で連携しないか、という働きかけがあるが、どうしたらよいのか?」というスローフード山形の質問に対する回答として出されましたが、充分な討議がされないままスローフードジャパンとしての見解となりました。秋田県はかつて八郎潟の大規模開拓と米の減反政策など国の農業政策に振り回され続け、T.P.P.の影響を大きく受けると予想される稲作県のひとつです。さらに、スローフードインターナショナルはEUの農業政策に積極的に関与して政治的な提言をしています。スローフードは農業政策への疑問から始まりました。T.P.P.に対するスローフードジャパンのこの見解は、これからの日本のスローフードの行方を決める大きな決定となるでしょう。
また、特別参加したスローフードコリア(韓国)のキム・ビョンスさんたちから、今年10月1日から6日までソウル近郊のナミャンジュ(南楊州)市で開かれる『2013 AsiO Gusto』(テッラ・マードレとアジア・オセオニア地域スローフード国際大会)のプレゼンテーションがありました。
日本のスローフードがイタリアに学ぶ時期は、すでに終わりつつあります。いまは、食文化も社会状況もイタリアとは大きく異なる日本で、そして東日本大震災と原発事故を経験した日本で、いかにアクションを起こし、人とつながり、スローフードの新たな動きを生み出してゆくのか、組織の在り方ではなく運動の実効性が問われています。

総会に先立つ前夜祭は、畳に座って角館風御膳料理を食べるオールドスタイルの宴会。宿泊は8畳間に7人で眠る合宿風。総会後の親睦会は場所を移動して、温泉「ゆぽぽ」の料理長が秋田の食材を使った心尽くしのビュッフェ。まさに、秋田らしい素朴な総会でした。                              (↓写真下:大会に参加したスローフード気仙沼のメンバー)